なぜ売れていないのか?


非常に個性的で、世界的に見てみてもこれほどまでに遊び心にあふれた車
はあまり無いだろうと言えるぐらいのデルソルですが、販売面から見てみ
ると、これはもう車と言う商品としては失敗作だったとしか言えないかも
しれません。

「なぜデルソルが売れていないのか?」と言う事を私なりに色々と考えた
り、人に聞いてみたりした結果、以下のような問題点が出てきました。

・アメリカを意識したデザイン
・2シーターと言う実用性の無さ
・フルオープンより開放感の劣るタルガトップ
・バブル期を基準とした価格設定
・先代CR−Xのライトウェイトのイメージ
・トランストップのヘビーウェイトのイメージ
・各種雑誌のデルソル批判
・オープンカーブームによるライバルの増加

まず、アメリカを意識したデザインですが、正直いいますと私も初めてデ
ルソルを見た時には変なデザインだと思いました。
その頃は丁度、スープラやソアラといった日本では不評だった北米デザイ
ンが主流になっていた頃で、デルソルもその不評のあおりをまともにくら
ってしまいました。
一部の評論家は絶賛していたのですが、一般ユーザーからの正直な印象は
格好悪いだったようです。
見慣れてしまえばたいした事ないどころか、とても味のあるデザインに見
えるのですが、見慣れていない人から見れば我慢できないのかもしれませ
んね。
あと何年かたてば、必ず受け入れられるデザインだと私は思っています。

次に2シーターと言う実用性のなさです。
まず、どういった人が実用性の無い2シーターオープンカーを購入するか
というと、「オープンに憧れた若者がファーストカーとして購入」と言う
タイプと、「オープンに憧れた壮年がセカンドカーとして購入」というタ
イプに別れます。
ほとんどに人がオープンカーを購入する動機は、オープンカーに非日常性
を求めているんですよね。
実用性と引き換えに非日常性や開放感を手に入れる訳なんですから、ほと
んどの人がタルガトップっよりもフルオープンを選んでしまうのではない
でしょうか?
セカンドカーで購入できる余裕のある人は、もう一台の車に実用性を求め
れば言い訳ですから、思いっきり趣味に走った車を購入できますし、
ファーストカーとして購入する場合、それなり実用性に見切りをつけ割り
切りを持って購入する訳ですから、中途半端な車は購入しないでしょう。
デルソルは、オープンの開放感とクーペの剛性、静粛性を両立させている
と言う事が売りな訳ですが、オープンカーを買う決意し2シーターと言う
実用性の無さを容認した人の前では、クーぺの剛性、静粛性はあまり魅力
には写らなかったのではないのでしょうか?
同じ1.6クラスに日本のオープンカーの代名詞とも言えるロードスター
がいた事もデルソルが売れなかった大きな要因でしょう。

そして、もう一つ大きな要因と言えるのが、先代、先々代のCR-Xにあ
った「ライトウェイト」のイメージではないでしょうか?
おそらく、今までのCR-Xを愛してきた人達は、次期CR-Xにさらなる
ライトウェイトへの進化を望んでいたのでしょう。
それが実際に発表されたCR-Xは大きく軟派な路線へ走ったCR-Xでし
た。その路線変更におそらく今までのライトウェイトスポーツであるCR
-Xを期待して人達には悪い意味で衝撃的だったのかもしれません。
さらに、トランストップというギミックが、より重いというイメージを与
えてしまい、今までのライトウェイトなCR-Xとのギャップは計り知れ
ない物だったと思います。
期待を裏切られた気持ちが、雑誌への厳しい評価へと繋がってしまったの
かもしれません。
デルソルがどんなにオープンカーの中で高い剛性を誇っていたとしても、
クーペの剛性を知っている人達には物足りないものだったのでしょう。

とにかくデルソル。
オープンとしての開放間ではオープンの代名詞であるロードスターと比較
され、クーペとしての運動性能ではライトウェイトスポーツの代名詞とも
言える先代CR-Xと比べられてしまったんですね。
まさに悲運の車と言えるでしょう。

個人的には、デルソルの魅力はオープンでもなくクーペ並みの快適さでも
なく、その二つの魅力を併せ持った新しい形だと思ってます。
どこかの雑誌に書いてあった言葉ですが、
「いつの時代も先駆者への世間の風当たりは強い」
のでしょうね。
今の時代は認められていなくても、その新しい車としての魅力はきっと理
解されると私は信じています。
つねに新しい形にチャレンジし、デルソルのような魅力的な車を生み出し
てくれたホンダには、心から感謝しています。



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